2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20740142
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
酒井 一博 Keio University, 経済学部, 助教 (10439242)
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Keywords | 素粒子 / 数理物理学 / 弦理論 / 可積分系 / AdS / CFT対応 |
Research Abstract |
弦理論とゲージ理論の等価性を主張するAdS/CFT対応は、近年の場の理論・弦理論の分野で最も活発に研究されているテーマである。本研究では可積分性を利用することで、AdS/CFT対応における精密な定量的分析を行った。今年度は特に、近年Alday-Maldacenaにより提唱されているゲージ理論のグルーオン散乱振幅の計算法に可積分性がどのように適用できるかを明らかにし、一般のn点振幅の計算法の構築を目指した。 Alday-Maldacenaの理論により、ゲージ理論のグルーオン散乱振幅の強結合極限は、弦理論側のある特定の開弦振幅の解に対応することが分かっている。筑波大学の佐藤勇二氏との共同研究ににる二本の論文では、AdS_3空間に開弦が広がる基本的な場合に的を絞り、有限ギャップ解を最も一般的な形で構成した。有限ギャップ解は伝統的な古典可積分系の理論を利用して構成できる解としては最も一般的な解である。こうして構成した解の中で、どのような解がグルーオン散乱振幅に対応するかを明らかにした。 また基礎物理学研究所での講演は、現在雑誌投稿中の論文(理化学研究所の初田泰之氏、東京工業大学の伊藤克司氏、および佐藤勇二氏との共同研究)に基づくものである。この研究ではAdS_3空間における古典開弦解から一般のn点グルーオン散乱振幅の強結合極限を計算する方法を提示した。一般のn点振幅に対応する開弦解は、具体的な形を書き下すことはできない。しかしながら解を特徴づける補助的関数の満たすべき積分方程式を組み立てることで、n点振幅の求積問題を積分方程式の求積問題に帰着させることができる。我々はこの積分方程式を決定し、さらにこしが斉次sine-Gordon模型の熱力学的ベーテ方程式と同型であることを見出した。
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