2010 Fiscal Year Annual Research Report
CMB偏光成分の広帯域測定による原始重力波起源のBモード偏光の探索研究
Project/Area Number |
20740158
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
田島 治 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (80391704)
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Keywords | 宇宙物理 / インフレーション宇宙 / 宇宙背景放射 |
Research Abstract |
インフレーション宇宙論の決定的証拠となる宇宙背景放射(CMB)の特殊な偏光パターン「Bモード」の探索を地上観測実験QUIETを用いて行った。Bモードの強度はrというパラメータであらわされ、r=0.01~0.1が有力と言われている。一般的なインフレーションモデルにおいて、そのポテンシャルはV^<1/4>~10^<16>×(r/0.01)^<1/4>GeVと記述されるので、Bモードの測定は10^<16>GeVという超高エネルギースケールの物理とも深く関わる。 本年度は40GHz帯の観測結果から世界第2位のBモードの上限値r<2.2(95%信頼度)を得た。将来的にBモードの検出を決定的なものとするには、その妨げとなるフォアグランド(銀河系からの前景放射)の寄与見積もることが必須条件となり、本研究では40GHz帯の観測領域の1つにフォアグランドの寄与を確認した。これはフォアグランドが最小になる90GHz帯でのその寄与見積もる上で非常に重要な結果である。90GHz帯データも既に取得済みであり、両周波数帯での観測を組見合わせて世界最高レベルのBモード探索が期待される。 本研究のもう一つ注目すべき点は、QUIET実験が系統誤差に対して極めて強固であることを証明したことである。Bモードは極めて微弱な信号である。近い将来Bモードを確実に発見するためには、検出器感度の向上だけでは不十分である。従来の観測実験よりも桁違いに小さな系統誤差を達成する必要がある。今回達成した世界最良の系統誤差はr=0.10未満に相当する。主要な系統誤差の原因は特定されており、既に90GHz帯レシーバーでの観測に反映されている。今後の結果ではさらに優れた精度を達成する見通しである。
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