2008 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性体Mn酸化物のスピン分極の実時間イメージング
Project/Area Number |
20740169
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上岡 隼人 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 助教 (40431671)
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Keywords | 光物性 / 可視化 / 物性実験 |
Research Abstract |
本研究は、時間分解イメージング測定法を用いて、強磁性相において励起されたスピン分極状態の時間・空間発展の観測および発展機構の解明を行うことを目的としています。この測定は、超短パルスレーザーを光源とするポンプープローブ光学系で行い、Kerr効果によるプローブ光の偏光回転を通じ、スピン分極状態を検出することになります。本測定系の特徴は、プローブ光をポンプ光より大きなスポット径となるよう、ポンプ光と同心状に試料上に集光し、その反射像全てを、1次元フォトダイオード検出器で平面的に走査する点です。プローブ光スポット内の各箇所での微小変化を同時検出することで、プローブ領域のスピン分極状態のイメージを高感度かつ高速に取得できます。 平成20年度の研究は、上記測定系の性能改善およびその検証が主要な内容となりました。スピン分極状態の観測に先立って、まず観測の報告例のある他の素励起の空間伝播を可視化しました。ここでは、強誘電体LiTaO3上の分極波を測定対象として選択しています。実験においては、試料表面にポンプ光を入射して過渡的な分極状態を作り出し、その分極状態の波束が、励起後に光速の15%の速度で同心円状に拡大してゆく様子が明確に観測されています。これは、文献"J. Phys. Chem. A 103, 10260(1999)"で示された同物質における実験結果を、本手法を用いながら正確に再現しています。また、透過率変化としてΔR(ΔT)〜0.001程度の変化まで検出できる感度特性を持つことが確認できました。平成21年度は、本手法をスピン波励起状態の波束運動の観測に適用し、スピン分極状態の時間・空間発展の研究に繋げてゆく予定です。なお、本手法を使用した小型ポンプ・プローブ測定系の特許を、現在出願中です。
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