2009 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性体Mn酸化物のスピン分極の実時間イメージング
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20740169
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
上岡 隼人 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 助教 (40431671)
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Keywords | 光物性 / 可視化 / 物性実験 |
Research Abstract |
本研究は、時間分解イメージング測定法を用いて、強磁性相において励起されたスピン分極状態の時間・空間発展の観測および発展機構の解明を行うことを目的としています。この測定は、超短パルスレーザーを光源とするポンプ・プローブ光学系で行い、Kerr効果によるプローブ光の偏光回転を通じ、スピン分極状態を検出することになります。Kerr効果による偏光回転は、Mn酸化物等の磁性体の典型値で0.001~0.01度程度であり、これは10^<-4~-5>の強度変調を検出する感度を必要とします。既存の0次元検出の場合には、これはプローブ光の縦横偏光成分をバランス検出することで行っています。この検出をイメージング手法で行うには、バランス検出の方法は使用できないので、差分検出の方法を採用しました。また、スピン分極の空間伝播は、μmの波束伝播を観る必要があるため、高倍率の顕微システムの構築が必要です。我々は、昨年度までにこの差分検出器系を用いて、10^<-3>程度の変調を示すポラリトン伝播の検出までに至りました。その後、Mn酸化物において測定を行いましたが、変調の大きさが測定系のS/Nと同程度であることから、スピン分極の伝播には至りませんでした。また、補完手段としてマルチチャンネルロックイン検出系での測定も行いましたが、検出系の入力チャンネル数の制限による空間分解能の不足等から、同様の結果となっています。現在、再度差分検出器系の改良を試み、量子化に優れたデジタイザと高繰り返し(76MHz)のチタンサファイアレーザー発振器、および高倍率(X20)の対物顕微鏡を使用することで、空間分解能で0.4μm/ch、10^<-4>の大きさの反射率変調まで安定して検出できるイメージング性能が出せています。これはロックインアンプによる検出水準に達しており、顕微イメージング手法による空間分解能と併せて、本件の差分検出法の極値を出せているものと考えます。現在二次元の干渉光学系を適用して、イメージの偏光回転の高精度取り込みを試みているところであり、当初目標であるMn酸化物のスピン分極伝播の検出を引き続き目指して行きます。
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Research Products
(2 results)