2008 Fiscal Year Annual Research Report
光ポンプ・テラヘルツ波プローブ分光測定による有機導体の密度波ダイナミクスの研究
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20740170
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邉 紳一 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (10376535)
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Keywords | 有機導体 / 光学伝導度 / ポンププローブ分光 / テラヘルツ波 |
Research Abstract |
本研究初年度の目的および研究実施計画は、meVエネルギーを持つモノサイクルテラヘルツ光源を用いた光ポンプ・テラヘルツ(OPTP)計測系を立ち上げ、(TMTSF)_2PF_6サンプルのスピン密度波(SDW)ギャップの形成ダイナミクスを調べることが目標であった。このとき熱による温度上昇の効果を最小限にくいとめるため、低繰り返しのパルス状光源を用いて計測系を立ち上げることが必須であると計画書に記載した。 本年度は、実際に低繰り返し(1kHz)のチタンサファイア多段増幅器からの出力パルスを用いてOPTP計測系を立ち上げ、(TMTSF)_2PF_6サンプルの計測を行った。その結果、光照射によって瞬時にギャップがつぶれ金属的な応答が現れた。光弱励起下においては、SDWギャップの回復時間が、光の励起強度および温度に強く依存し、相転移温度近傍で発散することが確認できた。我々はテラヘルツ光プローブによってSDWギャップ(すなわちSDWのオーダーパラメーター)を直接プローブしているから、我々の計測は、SDW相転移点近傍における臨界緩和(Critical Slowing down)を観測できたものと考えている。 (TMTSF)_2PF_6のSDW相における臨界緩和現象は本研究で初めて観測されたものであり、擬一次元有機導体におけるSDW相の次元やスピン自由度等に深く関係することから、データの解析を進めることによって、上記物理現象に新たな知見を提供できるものと考えている。
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Research Products
(4 results)