2009 Fiscal Year Annual Research Report
光ポンプ・テラヘルツ波プローブ分光測定による有機導体の密度波ダイナミクスの研究
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20740170
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邉 紳一 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (10376535)
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Keywords | 有機導体 / 光学伝導度 / ポンププローブ分光 / フラヘルツ波 |
Research Abstract |
本研究課題は、光ポンプ・テラヘルツプローブ計測系を立ち上げ、(TMTSF)_2PF_6サンプルのスピン密度波(SDW)ギャップの形成ダイナミクスを調べることが目的である。フェムト秒の近赤外パルス光によってSDW相に擾乱を与え、その後ピコ秒からナノ秒にかけてSDW相が回復していく様子を、テラヘルツ帯域にあるSDWギャップスペクトル変化によって観測する。 前年度は計測系を立ち上げ光励起に伴うサンプルのテラヘルツ反射率変化を観測することに、まずは成功した。しかしながら光励起後に時々刻々と変化する試料の物理的変化を詳細に議論するためには、反射スペクトル解析を行うことが欠かせない。そのためには非常に微弱な反射時間波形スペクトル変化を精度良く計測することが必要である。また、デリケートな温度依存性を議論するために、出来る限り弱い励起エネルギーで格子温度上昇効果を最小限に抑えて計測を行う必要がある。 本年度はこれらの困難を解決するべく様々な変調計測を組み合わせることで、わずか0.5%の振幅反射率スペクトル変化も計測できる系を立ち上げ、温度上昇効果を0.05-0.1K程度に抑えて計測を行うことが可能となった。その結果以下の三つの主要な研究成果が得られた。 (i) 近赤外光ポンプ~2ps以内で絶縁体-金属転移が起こること。 (ii) 転移温度T_<SDW>より十分低温では、光励起によるSDWギャップの収縮と回復が明瞭に観測できること。 (iii) T_<SDW>近傍では低次元電子系に起因するゆらぎの効果が非常に大きくなり、光励起後の緩和時間がT_<SDW>に向けて発散する典型的なCritical Slowing Down現象が確認されること。 本研究課題の成果の主要部分はPhysical Review B Rapid Communicationsに掲載され、更に本論文はEditor's suggestionsに選出された。
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Research Products
(6 results)