2008 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属酸化物における電子及びフォノン励起による光相制御
Project/Area Number |
20740172
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田久保 直子 The Institute of Physical and Chemical Research, 加藤分子物性研究室, 基礎科学特別研究員 (60447315)
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Keywords | 光誘起相転移 / 強相関電子系 / 絶縁体-金属転移 |
Research Abstract |
本研究では、多様な物性を示す強相関電子系を対象とし、光誘起相転移現象を用いた光による物性制御とそのメカニズムの解明を目的とする。本年度は、特に、電子励起状態を介した伝導度の制御に焦点を当てた。強相関電子系の3つの物質において、巨大な伝導度の変化を伴う光誘起現象の観測に成功した。 (1)マンガン酸化物薄膜における光誘起金属-絶縁体相転移 絶縁体-金属相転移を示すPr (Ca, Sr) Mn03薄膜を作製した。金属状態でパルスレーザーを照射し、数桁の伝導度の減少を伴う永続的な転移を観測した。温度や波長依存性等から、電子励起状態を介し、準安定である金属相から安定である絶縁体相への相転移であることを確かめた。光誘起金属-絶縁体相転移の観測は、あらゆる系においてこれが初めての報告となり、光物性や強相関電子系などの相転移現象の研究において大変意義がある。 (2)スズ酸化物薄膜における光誘起現象 酸化物透明半導体Sn02薄膜を作製した。室温、真空中においてUV光を照射し、数桁の伝導度の増加を伴う永続的な転移を観測した。試料の酸素欠損量や波長依存性等から、電子励起状態を介し、試料表面から酸素が脱離することにより、主に移動度が増加することを確認した。本研究では、光照射による酸素脱離効果の統一的なメカニズムを初めて打ち立てた。また、室温で巨大な変化を示すことから、応用への可能性も期待される。 (3)BEDT-TTF系における光誘起絶縁体-金属転移 絶縁体-金属転移を示す分子性導体α(BEDT-TTF)-I3を作製した。絶縁体状態でパルスレーザーを照射し、数桁の伝導度の増加を伴う過渡的な転移を観測した。詳細なメカニズムの解明は現在進行中である。
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