2008 Fiscal Year Annual Research Report
放射光X線共鳴非弾性散乱における励起の偏光依存性と対称性
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20740179
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
石井 賢司 Japan Atomic Energy Agency, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (40343933)
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Keywords | X線散乱 / 非弾性散乱 / 強相関電子系 / 電子励起 / 軌道秩序 |
Research Abstract |
3d遷移金属のK吸収端での共鳴非弾性X線散乱における電子励起の偏光依存性と対称性を議論することを目的として、ペロプスガイド型銅フッ化物KCuF3のdd励起の偏光依存性の測定を行った。KCuF3では1個のホールをCuのeg軌道に持ち、そのホール軌道はz2-x2とy2-z2が空間的に交互に配列した軌道秩序の状態にある。そのdd励起には、eg軌道からeg軌道に電子が遷移するもの(eg→eg励起)とt2g軌道からeg軌道に電子が遷移する励起(eg→t2g励起)が考えられる。 CUのK吸収端において、入射X線の偏光をpi偏光とし、散乱光の偏光をsigma偏光とpi偏光を分離して、ei//a+c、および、ei//a+b(eiは入射X線の偏光ベクトル、a、b、cは各結晶軸方向の単位ベクトル)の条件で測定したところ、eg→t2g励起はすべての偏光条件で観測されたのに対し、eg→eg励起はある特定の偏光条件でしか観測されず、dd励起に明瞭な偏光依存性があることを明らかにすることができた。 遷移金属K吸収端のRIXSで、散乱光の偏光状態を解析した研究は世界的に見ても例がなく、本研究が初めてである。しかし、これらの励起が具体的にどういうdd励起であるかについてはまだ同定するには至っておらず、理論家と共同して研究を進めていく必要がある。また、偏光についてより系統的な測定を行うことで、励起に関する一般的な選択則を導きたいと考えている。偏光依存性は対称性だけから決まるため、パラメータによらない厳密な議論が可能である。一たび選択則が確立すれば、偏光依存性の測定は励起の同定に極めて有効に働くと期待できる。
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Research Products
(15 results)