2010 Fiscal Year Annual Research Report
放射光X線共鳴非弾性散乱における励起の偏光依存性と対称性
Project/Area Number |
20740179
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
石井 賢司 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (40343933)
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Keywords | X線散乱 / 非弾性散乱 / 強相関電子系 / 電子励起 / 軌道秩序 |
Research Abstract |
共鳴非弾性X線散乱(RIXS)における偏光依存性は励起の対称性と密接な関係があると考えられ、ひとたび励起の対称性と偏光依存性に関する選択則が確立すれば、モデルのパラメーター値によらずに励起の起源の議論が可能となる。昨年度、世界初となる入射光、散乱光両方の偏光を制御した状態でのRIXSの測定を行い、銅フッ化物KCuF_3のK吸収端でのRIXSにおいて、dd励起に顕著な偏光依存性が観測された。今年度はその理論的解釈についての検討を進めた。 KCuF_3中のCuでは5重に縮退したd軌道が結晶場によりt_<2g>軌道とe_g軌道に分裂している。1個のホールがe_g軌道を占有しているが、そこには軌道自由度が存在し、大きなJahn-Teller歪みを伴った軌道秩序の状態にある。従って、dd励起には大きく分けて、t_<2g>$軌道からe_g軌道に電子が遷移するものと、e_g軌道間で電子が遷移するものがある。測定の結果、この2つdd励起の偏光依存性に顕著な違いが存在することを発見した。前者は測定したすべての偏光条件で観測されたのに対し、後者はある特定の配置でのπ-π'偏光でのみ観測された。この観測結果は、入射(散乱)X線の既約表現Γ_i(Γ_f)、始状態(終状態)の波動関数の既約表現P_i(P_f)としたときに、励起がX線吸収により内殻正孔が生成された原子で局所的に起きる場合は、「『Γ_i×Γ_fとP_i×P_fが少なくとも一つの共通した対称性を持つ』という選択則が励起が観測されるための必要条件を与える」、と考えること説明できることがわかった。この選択側を用いることで、今後、RIXSで観測されるdd励起の同定が容易になると期待できる。
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Research Products
(16 results)