2008 Fiscal Year Annual Research Report
低周波フォノン誘起による重い電子の検証とその普遍性
Project/Area Number |
20740181
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
筒井 智嗣 Japan Synchrotron Radiation Research Institute, 利用研究促進部門・非弾性散乱チーム, 副主幹研究員 (70360823)
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Keywords | 価数揺動 / 低温 / フォノン / 充填スクッテルダイト / X線非弾性散乱 |
Research Abstract |
一連のROs_4Sb_<12>(R:軽希土類)化合物では、SnOs_4Sb_<12>において磁場に鈍感な重い電子的振る舞いが観測され、f電子が存在しないLaでも重い電子系物質に典型的な大きな電子比熱係数が観測されている。このことは本質的にROs_4Sb_<12>について電子相関以外の原因で重い電子的振る舞いが観測されていることを示唆している。そこで、本研究ではROs_4Sb_<12>およびその関連物質について、X線非弾性散乱を中心にフォノンや構造に関する研究を進めてきた。本年度は、価数揺動を示すSmOs_4Sb_<12>の特異性をより明らかにするため、SmOs_4Sb_<12>の圧力下の電子物性や価数揺動物質でカゴ状構造を有するSmB_6のフォノンとSmの価数の相関について調べた。その結果、SmB_6の格子定数の温度変化やSmによる光学モードの温度変化はSmの価数の温度変化に伴うSmイオン半径の温度変化で説明できたが、SmOs_4Sb_<12>はSmイオン半径の温度変化だけでは説明できないことが明らかとなった。SmOs_4Sb_<12>の場合には、混成状態の変化に伴う格子変形によるSbの正20面体構造の体積の減少も回折実験から示唆され、それに対応するSm モードのエネルギー変化が期待された。しかしながら、X線非弾性散乱実験からはその顕著な変化は観測されていない。また、本研究の目的である普遍性に関する知見を得るために重い電子的振る舞いが報告されているNdOs_4Sb_<12>およびPrOs_4Sb_<12>のX線非弾性散乱測定を行なった。その結果、希土類元素のモードのエネルギーは原子番号の増加とともに減少し、既に報告されている2次のラマン散乱の結果と良い一致をすることが明らかとなった。
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