2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20740184
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
神島 謙二 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (20321747)
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Keywords | 強磁場 / 試料作製 |
Research Abstract |
前年度に引き続き、物質・材料研究機構強磁場共用ステーションに設置されている大口径超伝導磁石を利用させてもらい、トリエチルアミンを原料とした磁場印加熱分解実験を行った。 6Tの磁場中で作製した強磁性試料は300Kでは3.0emu/g,2Kでは3.2emu/gの磁化を示した。これは前年度作製した強磁性試料のチャンピオンデータの2倍以上の大きさである。したがって、熱分解時に磁場を印加することにより、熱分解炭素内での強磁性構造の形成が促進されている可能性がある。この強磁性炭素の結晶構造を調べるため、大型放射光施設SPring-8での放射光X線回折測定実験を行ったところ、磁場を印加せずに作製した試料に比べ、ダイヤモンド構造のピークが増加していることを見いだした。一般に、低次元の構造よりもより高次元的な構造の方が磁気秩序を起こしやすいため、本実験結果は矛盾しない。 この結果より、ダイヤモンド構造が強磁性に関与していると考えられるため、強磁場中熱分解装置の石英反応管の中に非磁性ダイヤモンド粉末を挿入し、その上に熱分解生成物を堆積させた。6Tの磁場を印加しながらダイヤモンド粉末上に堆積させて作製した強磁性試料の磁化は300Kでは6.4emu/g,5Kでは6.9emu/gであった。これはダイヤモンド粉末なしで作製した強磁性試料の2倍以上の大きさである。1炭素原子当たりの磁化は5Kで1.42×10^<-2>μBと見積もられる。炭素原子あたりの磁化が小さいのは、磁気分離によって回収した強磁性試料が非磁性グラファイトおよび非磁性ダイヤモンドとの混合物となっているためと考えられる。今後、炭素系強磁性体の物性評価を詳細に行うために、強磁性部だけを取り出すことができるよう、磁気分離の方法を検討する必要がある。以上より、磁場中熱分解炭素の作製条件を探索し、強磁性発現の可能性が高い条件を実験的に明らかにすることに成功した。
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