2008 Fiscal Year Annual Research Report
非共線スピン遍歴強磁性体の圧力誘起相転移と輸送特性
Project/Area Number |
20740186
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井口 敏 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 助教 (50431789)
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Keywords | 物性実験 / 磁性 / 圧力効果 / 相転移 / 輸送特性 |
Research Abstract |
本年度は、主にパイロクロア型モリブデン酸化物における16GPaまでの超高圧かつ静水圧性の高いキュービックアンビルセルによる広範な圧力下電子相図を完成させ、その起源について現時点での最良と考えられるメカニズム(拡張された二重交換相互作用モデル)によって明らかにした。 本研究で扱ったパイロクロア型モリブデン酸化物は、常圧下では希土類元素のイオン半径の違いにより超交換-二重交換相互作用の働き方が変化するモット転移系であると以前から報告されていた。しかし、代表者らのこれまでの研究により、高圧下では単純な超交換-二重交換相互作用モデルでは説明できない振る舞い(非常に抵抗率の高い常磁性金属相への転移)を示すことが分かって来た。その起源を探るためにまずは希土類イオン半径、印加圧力ともに広範囲な全体相図を得ることを試みた。圧力効果はフラストレーション系などにおいては特に試料依存性、不純物などの負の要因を限りなく排除し、連続的な圧力パラメータによる変化を捕らえることが出来るため非常に有効な手段である。 その結果、イオン半径の違い、すなわち常圧下での基底状態、によらず全ての組成で非常に散漫な常磁性金属相へ転移することが分かった。しかもその常磁性金属相は常圧でのモット転移点から広がっており、強い電子相関の帰結であることは明らかである。 これは、フラストレーション格子系での多軌道系のモット転移における新しい電荷-スピン結合の結果であると考えられ、今までに研究例の少ない、もしくはその複雑さの為にあまり理解が進まなかった重要な例の一つであると考えられる。このような多軌道が関与するモット転移系物質の研究は、モット転移に関する深い理解のために近年その重要性を増しており、本研究結果はそれらの発展に寄与できるものと考えられる。
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Research Products
(3 results)