2009 Fiscal Year Annual Research Report
非共線スピン遍歴強磁性体の圧力誘起相転移と輸送特性
Project/Area Number |
20740186
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井口 敏 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 助教 (50431789)
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Keywords | 強相関系 / 物性実験 / 磁性 / 圧力効果 / 磁気輸送現象 / 相転移 |
Research Abstract |
前年度から得られたパイロクロア型モリブデン酸化物の超高圧力下での常磁性金属相に関する結果をまとめ、論文発表を行なった。また、理論的な研究での進展もあり、圧力下におけるR2Mo2O7の状況に近いモデル計算でも実験結果と同様の温度変化がほとんど無い金属状態が発現することが分かって来た。そこで分かってきたことは、超交換相互作用と二重交換相互作用の拮抗する系であってもパイロクロア型モリブデン酸化物めようなフラストレーション格子系では、超交換相互作用の増大が必ずしも反強磁性(またはスピングラス)絶縁体を有利にするわけではなく、温度変化の非常に少ないスピンフラストレーションの強い金属的状態も現れ得るということである。このように実験、理論の両面からフラストレーション系のモット転移系における伝導現象の詳細が明らかになってきており、モット転移をより深く理解するためにも同様のモット転移系の更なる調査が望まれる。 また、スピングラス絶縁体であるY2Mo2O7にCdを置換することで、ホールドーピングによる金属化も試みた結果、圧力下と同様の温度依存性のほとんど無い比較的高い抵抗率を示す常磁性状態を示すことが分かって来た。この相は常圧で得られることから、高圧下では不可能だった(磁気)比熱や(異常)ホール抵抗率、ゼーベック係数などのより詳細な測定が可能であり、電子相関の強いフラストレーション系の輸送現象の詳細な調査、理解が期待できる。 特に近年では、パイロクロア格子系において特有に現れるスピンカイラリティーといった物理量が輸送現象に与える影響や、フラストレーション系における電荷・スピン複合自由度の系での輸送現象についての関心なども高まってきており、本研究結果はそれらの一助となると考えられる。
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Research Products
(3 results)