2009 Fiscal Year Annual Research Report
圧力下重い電子系における臨界反強磁性-軌道揺らぎと超伝導
Project/Area Number |
20740189
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
服部 一匡 The University of Tokyo, 特性研究所, 助教 (30456199)
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Keywords | 強相関電子系 / 物性理論 |
Research Abstract |
Ce系化合物等で見られる圧力下重い電子状態でのf電子の軌道揺らぎについて解析した。具体的には、強相関電子系の解析に有効な手法「動的平均場理論」を用いて、f電子が二つの軌道を持つ場合のアンダーソン格子模型を調べた。異なるサイト間の異方的軌道相互作用を平均場近似で扱い、圧力を増加させると二つの軌道占有数が入れ替わる軌道クロスオーバが急激に変化するメタ軌道転移を見いだした。f電子と伝導電子の混成が十分に小さい場合はこのメタ軌道転移は一次転移になることがわかった。これらの結果はCe系化合物において、圧力下で見られる二つの近藤温度が急激に接近する振る舞いを定性的に説明する。さらにf電子の価数が+1に近いまま、このメタ軌道転移近傍で急激に変化することを見いだした。このことは価数の大きな変化を伴わない転移もしくわクロスオーバとして、f電子価数転移の現実的なシナリオを提供するものである。またこの軌道揺らぎを媒介とした超伝導も発現することが期待できる結果であり、今後の研究でさらに解析をする必要がある。21年度の関連する研究では、ベータパイロクロア化合物の強結合超伝導と非調和振動の理論を構築し、実験データと理論を定量的に一致させることができるようになり、論文にまとめた。また、f電子系でしばしば観測される量子臨界点からずれた圧力領域において残留抵抗が増大するということについての解析を行った。近藤効果とサイト間相互作用の競合により近藤効果に内在する伝導電子とf電子との間の軌道揺らぎが増大することを指摘し、残留抵抗の増大についてこの軌道揺らぎを一つの可能性として提案した。
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