2010 Fiscal Year Annual Research Report
重い電子系化合物における反強磁性と超伝導の四重臨界点
Project/Area Number |
20740195
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
八島 光晴 大阪大学, 基礎工学研究科 (10397771)
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Keywords | 重い電子系 / 超伝導 / 量子臨界点 / 圧力効果 / NMR/NQR / 磁性 |
Research Abstract |
重い電子系化合物CeIrIn_5は常圧で超伝導を示す興味深い物質である。この物質は、CeMIn_5(M=Co,Rh,Ir)の内の一つで、CeCoIn_5やCeRhIn_5(圧力下)も超伝導を示す。特に、CeCoIn_5はCe系重い電子系化合物では最大の超伝導転移温度(T_c=2.6K)を持ち、非常に注目されている物質である。また、CeRhIn_5も圧力下でT_c~2.2Kを示し、かなり高いT_cを持っている。しかし、CeIrIn_5はT_c^<max>~1Kで、CeCoIn_5やCeRhIn_5に比べT_cが非常に低くなっている。また、CeCoIn_5やCeRhIn_5のケースでは、反強磁性スピン揺らぎの存在により超伝導が発現しているものと考えられているが、CeIrIn_5では反強磁性スピン揺らぎが強く抑制されていることが分かっている。以上のことから、これまで超伝導発現の主原因と考えられてきた反強磁性スピン揺らぎが、CeIrIn_5の超伝導に関しては適用できないのではないかと考えられ、それを解明するためにNMR/NQR法を用いて実験研究を行った。 結晶中の電場勾配に対応した物理量vQ_の圧力依存性から、2.3GPa付近で大きく傾きが変化している様子を観測することに成功した。これは、Ce価数が2.3GPa以上で大きく変化していることを示しているものと思われ、このことからCeIrIn_5では高圧下で価数揺らぎが誘起されているのではないかと考えられる。また、超伝導状態における核スピン格子緩和時間(T_1)測定から、加圧に伴い残留状態密度が増加する振る舞いも観測している。T_c自体は加圧に伴い上昇するため、超伝導性が良くなっているにもかかわらず、残留状態密度が上昇する振る舞いは単純な不純物効果からは説明できず、何かしらの相互作用(価数揺らぎなど)が存在していると考えられる。また、その影響でT_cが大きくなることも考慮すれば、CeIrIn_5では、CeCoIn_5やCeRhIn_5とは異なり、価数揺らぎの可能性も含めた反強磁性スピン揺らぎとは異なる相互作用が超伝導発現の主原因である可能性が高いと結論付けられる。したがって、CeIrIn_5の超伝導現象の解明には、新しいメカニズムを導入する必要があり、超伝導研究分野の新規開拓に繋がるものと期待している。
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Research Products
(25 results)