2008 Fiscal Year Annual Research Report
高温超伝導体母物質におけるPIN接合の創製とその物理
Project/Area Number |
20740196
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
瀬川 耕司 Osaka University, 産業科学研究所, 准教授 (20371297)
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Keywords | モット絶縁体 / 銅酸化物高温超伝導体 / 高品質単結晶 / 輸送特性 / PIN接合 |
Research Abstract |
(Y, La)(Ba, La)_2Cu_3O_y系(YLBLCO系)は高温超伝導体としてよく知られるYBa_2Cu_3O_y系に不純物置換をした系であり、酸素量を減らすことによって結晶構造を変えずにキャリアをp型からn型に変化させることができる。高温超伝導銅酸化物でそのような系はそれまで発見されていなかった。本研究では結晶構造を保ったままp型キャリアとn型キャリアが結晶内で共存しうる可能性を活かしてPIN接合を実現し、強相関系ならではの機能発現を目指している。今年度はまず、PIN接合作製に使用する純良単結晶を得るためにYサイトが全量Laで置換されたLa(Ba, La)_2Cu_3O,_y[LBLCO]単結晶作製を試みた結果、FZ法により小さいながらも単結晶が得られた。しかしこのLBLCO系単結晶をアニールした結果、酸素量を増やしても減らしても抵抗率がほとんど変化しないことが明らかになった。この系では格子が広がると酸素が動きにくくなる傾向が見られるためLBLCO系では酸素量の変化する幅が非常に小さくなっている可能性が高い。そのため、YサイトにLaを入れずに全量Yに維持した結晶の作製を現在試みているところである。それに先駆けて多結晶体で酸素量を変化させるアニールを試みたが、厳しい条件では多結晶体は単結晶より分解しやすいことが明らかになった。また、YLBLCO系において基礎的な物性を明らかにするため、c軸抵抗率の温度依存性から反強磁性転移温度を求める実験を行った。その結果、磁気転移の見え方がキャリアの符号によって異なっている結果を得たので共同研究により中性子散乱の実験も行っているところである。
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