2009 Fiscal Year Annual Research Report
希土類化合物における多極子秩序/揺らぎのNMRによる研究
Project/Area Number |
20740198
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
谷田 博司 Hiroshima University, 大学院・先端物質科学研究科, 助教 (00452615)
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Keywords | 強相関電子系 |
Research Abstract |
本研究の目的は、希土類化合物において多極子秩序を示す系を対象に、主に多極子秩序,および多極子揺らぎの特徴を解明することにある。多極子秩序を示す物質は例外的に転移温度の高いDyB_2C_2を除くと、一般に転移温度が低いことが特徴である。寒剤として^4Heを用いる場合の測定最低温度はせいぜい1.4K程度であり、上記物質の秩序相を詳しく調べるためには、^3Heを用いた測定系の整備が不可欠である。寒材として^3Heを用いることで最低温度0.5Kまで測定を行うことが可能であり、上記対象物質における多極子物性を調べることが初めて可能となる。そこで、本研究では^3He温度対応可能なNMR測定システムを構築し、NMR/NQRによるスペクトル,核スピン緩和率測定を行い、多極子物性の特徴の解明を目的とする。 初年度は同測定システムの構築に取り組み、実際に0.5Kを安定に維持することに成功した。本年度はそれを用い、実際にNMR測定を行った。対象とした物質は、典型的多極子物質であるCeB_6と結晶学的に同じ構造を持つ(TmYb)_<0.5>B_6である。同物質において低温の磁性を担うのはTm^<3+>であり、結晶場基底状態は多極子自由度を有すとされている。電気抵抗,比熱測定の結果から、低温でなんらかの秩序形成の可能性が指摘されていたが、その詳細については未解明であった。異常の起こる温度は低く、秩序相の詳細を調べるためには^3He温度までの測定が不可欠である。 そこで異常の起源解明を目的とし、本研究により構築した^3He温度対応測定システムを用いて^<11>B核NMRによるスペクトル測定を最低温度0.5Kまで行った。その結果、1.5K以下において磁気双極子による秩序の起きていることを強く示唆する結果を得た。相転移の起源としては磁気双極子に由来するものであるが、結晶場基底状態は多極子自由度を有すことから、磁気転移に付随する異常として、転移近傍の低エネルギー励起に多極子自由度の関与している可能性が考えられる。
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