2009 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギー放射光による高温超伝導状態の面間および面外相互作用の解明
Project/Area Number |
20740199
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井野 明洋 Hiroshima University, 大学院・理学研究科, 助教 (60363040)
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Keywords | 銅酸化物高温超伝導体 / 角度分解光電子分光 / 電子構造 / 放射光 / 多体効果 |
Research Abstract |
本研究は、低エネルギー放射光角度分解光電子分光法の高い分解能とバンド選択性を活用して、銅酸化物高温超伝導体のバンド構造や微細準粒子構造を直接観測し、CuO_2面間の相互作用とCuO_2面外サイトの原子や不純物が、準粒子状態に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。 本年度は、以下の通り研究課題を実施した。 (1) Bi系銅酸化物高温超伝導体の不足ドープ領域における面外不規則性の効果の研究 Bi系銅酸化物の不足ドープ領域では、面外不規則性の増加が避けられない。これが、超伝導転移温度Tcの低下にどれほど寄与しているのか注目を集めている。低エネルギー放射光角度分解光電子分光を用いて、不足ドープのBi_2Sr_<1.6>La_<0.4>CuO_<6+δ>(Bi2201)およびBi_2Sr_2CaCu_2O_<8+δ>(Bi2212)のノード準粒子構造を精密に測定した。その結果、Bi2201では40meV付近の準粒子構造、Bi2212ではく15meV付近の準粒子構造の寄与が、ホール濃度の低下とともに急激に増大することがわかった。これは、面外不規則性による不純物ポテンシャルがあるために、ホール濃度の低下とともに遮蔽が働かなくなり、低エネルギー・フォノンとの散乱や、弾性不純物散乱が増大することを示している。また、主要な多体効果が、ホール濃度ともに移り変わることを示唆している。 (2) 二重層銅酸化物高温超伝導体Bi2212の面間相互作用の研究 低エネルギー放射光角度分解光電子分光で、Bi2212の二重層結合バンドと反結合バンドの分散を直接観測し、超伝導状態で両者の間に小さな混成ギャップが開くことを明らかにした。この知見は、Tcの層数依存性を解明する重要な手がかりになると期待される。
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