2009 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性金属磁化ダイナミクスにおける電流及びスピン流生成に関する理論的研究
Project/Area Number |
20740204
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
柴田 絢也 Kanagawa Institute of Technology, 基礎・教養教育センター, 准教授 (20391972)
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Keywords | 物性理論 / 磁性 / スピントロニクス / スピン流 / スピントルレク |
Research Abstract |
近年、電流と磁化(スピン)が相互に起因する現象を対象とした研究が盛んに行われている。その中で特に、微小な強磁性金属における磁化の電流応答(電流が磁化に与えるトルクや力、それにともなう磁化のダイナミクスなど)についての理論的実験的研究の理解が急速に進んでいる。 本研究の目的は、強磁性金属中の空間的に非一様な磁化のダイナミクスによって、電流及びスピン流が生成されるメカニズムを理論的に定式化することである。その為に、場の理論に基づいたグリーン関数法を用いて、非一様な強磁性磁化のダイナミクスにおける電流及びスピン流生成の微視的定式化を行うことである。 本年度は、昨年度得た、スピン起電力によるスピンホール効果の結果を下に、この逆の過程、すなわち、スピンホール流によるスピン移行トルクの計算を行った。これまで、スピン移行トルクにはスピン流が伴っていることは認識されていたが、スピン・軌道相互作用による寄与については計算されてこなかった。そこで、スピン・軌道相互作用の一次までの寄与を考慮して、スピン移行トルクの評価をおこなった。最初に、空間的に変化する磁化背景の下での外場によって誘起されるスピン流を評価し、それから、スピン移行トルクを評価した。また、伝導電子のスピン分極を直接計算することによって、スピン移行トルクを評価した。これらの二つの方法による結果は一致するべきものであるが、スキュー散乱機構によるスピン移行トルクについては結果は一致したものの、サイドジャンプ機構については、両者の一致がみられなかった。これは、スピン分極に寄与する電子の相互作用過程の見落としが原因と考えられるが、より確かな原因を突き止めることは出来ず、問題として残っている。これら結果については、磁性の国際会議で発表を行い、論文として出版した。
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Research Products
(3 results)