2008 Fiscal Year Annual Research Report
量子確率模型による環境制御とディコヒーレンス抑制の理論
Project/Area Number |
20740219
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
北島 佐知子 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 准教授 (70334571)
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Keywords | ディコヒーレンス / 緩和現象 / 量子確率過程 |
Research Abstract |
非平衡統計力学の手法を用いた量子コヒーレンスの消失過程とその抑制に関する研究を行った。この研究はY. Kondoによる実験との対応を考慮しつつ行われている。 第一に、注目系を取り囲む揺動磁場として、2状態遷移マルコフ過程を用いた量子確率模型について論じた。この過程では2状態間を遷移する際の頻度によってランダムさが特徴づけられる。具体的には、注目系を大きさ1/2のスピンなどの2状態系として、密度行列の非対角要素の時間発展を追うために必要な環境系の相関関数を求めることができる。これにより、注目系の自由度をあらわす物理量の時間発展を調べ、物理量の期待値、エントロピーの定式化を行った。これによりコヒーレンス消失過程の詳細を論じる。 第二に、上記の結果をもとに、パルス印加によるコヒーレンス消失抑制の問題に取り組んだ。具体的には、2状態遷移模型に対して、コヒーレンス消失抑制のためのパルスハミルトニアンを導入した。すなわち、注目系が揺動磁場によってひきおこされるコヒーレンス消失過程にたいし、等時間間隔でパルスを印加するメカニズムを取り入れ、模型の拡張を行った。この模型に対して、注目系の時間発展を追うために上記同様に相関関数を求めると、パルス印加の効果は、相互作用の効果を打ち消すように働く様子が時間発展の方程式中に現れ、直観的には理解可能である。しかし、この方程式の解析解を求めることは容易ではないので、現在、数値計算によってその振る舞いを調べ、パルス印加効果の詳細を検討しつつある。
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