2009 Fiscal Year Annual Research Report
量子確率模型による環境制御とディコヒーレンス抑制の理論
Project/Area Number |
20740219
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
北島 佐知子 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 准教授 (70334571)
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Keywords | ディコヒーレンス / 緩和現象 / 量子確率過程 |
Research Abstract |
非平衡統計力学の視点から理論枠組みを構築し、量子コヒーレンスの消失過程および抑制過程の研究を行った。 前年度に引き続き、注目系とそれを取り囲む環境系で構成される物理系を対象とした。注目するスピン系(キューピット)に作用する揺動磁場を環境系としたときに生じるコヒーレンス消失過程、並びにパルス印加による効果を詳細に検討した。すなわち、典型的な2つの確率過程、2状態遷移マルコフ過程及びガウス過程を用いた確率模型を考察の対象とした。従来の諸研究と異なる本研究の特徴は、パルス印加時における非対称模型の採用、さらには定常過程のみならず非定常過程をも対象としたことにある。加えて、非平衡系の特質を用いることにより、これら全ての扱いにおいて厳密な解析解を得ることに成功した。前年度は、パルス印加の効果を密度行列の非対角要素を数値的に解くという方法で行ったが、本年度の研究は進展して解析的厳密解を得た。これらの結果を用いると、揺動場の強さ、速さ、またパルス間隔などのパラメータを任意に設定可能となり、実験との対応を詳細に行い得る基礎を据えることができた。この結果は現在、査読付論文に投稿中である。これを踏まえて、方法論を拡張して非πパルスの印加に関する検討を進めている。さらに、2状態遷移マルコフ過程と等価な量子論的模型を構成することにより、量子マスター方程式から注目系の密度行列の時間発展を超演算子によって抜き出すことができる。このことを用いてπパルス印加効果を取り入れ、超演算子を繰り返し演算することで密度行列を表現するという方法論により、さらなる検討を進めている。
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