2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20740220
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
古石 貴裕 University of Fukui, 大学院・工学研究科, 准教授 (20373300)
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Keywords | 分子動力学シミュレーション / 水 / 疎水相互作用 / 固体表面 / 尿素 / 国際情報交換 / アメリカ |
Research Abstract |
ナノスケールの構造を持つ固体表面に水を配置したときの水分子の挙動を分子レベルで調べるために、グラファイトと水の系で分子動力学シミュレーションを行った。使用した系では炭素原子が六角形で連続的に続くシートが層状となっているグラファイトの結晶構造をコンピュータ内に再現し、その上に水滴を配置したシミュレーションを行った。前年度に、グラファイト表面に同じグラファイト構造を持つ、大きさ1.2nm×1.2nmの柱を1.2nm間隔で連続的に配置した固体表面を作成し、水滴を配置したシミュレーションを行った。その結果、柱が1.0nmより長い場合は、水滴の安定位置が柱の上部だけではなく、固体表面の底面にも存在することがわかった。この水滴の挙動から、上部と下部の安定位置の間には自由エネルギー障壁が存在することが示唆されたため、今年度はこの自由エネルギー障壁の値の導出を行った。値の導出のため、平衡状態での分子動力学シミュレーションではなく、柱のある固体表面に水滴を衝突させる非平衡シミュレーションを行った。衝突速度を調整することにより、同じ速度であっても、水滴が柱の上部位置にとどまる場合と、柱の下部に達する場合の二つの状態を実現できる。その速度範囲で100回程度の水滴の衝突シミュレーションを行い、下部に達する確率を求めることで、自由エネルギー障壁の値を求めた。この柱のある固体表面における水滴に対する自由エネルギー障壁は、近年の研究で存在が知られるようになったもので、その大きさの導出法や値自体は得られていなかった。本研究で求めた自由エネルギー障壁の結果は、世界に先駆けて具体的な値として得られてものであり、Nature, Scienceに次ぐ総合科学学術誌と言われている米国アカデミー紀要(PNAS)に掲載され国際的に高い評価を得た。また、尿素を含む水滴において同様なシミュレーションを行い、接触角や自由エネルギー障壁の尿素濃度依存性を分子動力学シミュレーションにより導出した。
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Research Products
(4 results)