2011 Fiscal Year Annual Research Report
量子アニーリングの大規模系に対する基礎付けと量子スピングラスへの応用
Project/Area Number |
20740225
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
鈴木 正 青山学院大学, 理工学部, 助教 (30391999)
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Keywords | 物性理論 / 統計力学 / 計算物理 / 量子計算 |
Research Abstract |
1.Kitaev模型における量子臨界点近傍での量子断熱時間発展に関する研究成果がJ.Phys.:Conf.Ser.から出版された。本論文ではKitaev模型の研究から異方的な準粒子スペクトルを持つような系における量子断熱発展の普遍的な法則を導いている。本研究は量子相転移をまたぐ時間発展についてのこれまでに知られていた法則を拡張し、より一般的な法則を見いだしたという意義をもっている。また、本研究は量子断熱発展の基礎理論という点で量子アニーリングの理論にも関連している。 2.Kibble-Zurek機構の観点から量子アニーリングとシミュレーティッドアニーリングをとらえた研究がJ.Phys.:Conf.Ser.から出版された。本研究では新たに2次元スピングラス模型の最適化問題におけるアニーリングを調べた。2次元以上の非自明な最適化問題にKibble-Zurek機構の視点を持ち込んだのは本研究が初めてである。本論文では数値計算の結果を報告しているが、量子アニーリングとシミュレーティッドアニーリングの比較についての理論的にはっきりした結論は得られていない。本研究は今後の理論的研究の足がかりとしての意義を持っている。 3.幾何学的フラストレーションのあるチェッカーボード格子上の横磁場イジング模型を量子モンテカルロ法により調べた成果をPhys.Rev.BとJ.Phys.:Conf.Ser.に報告した。本研究で調べた系は量子スピングラスとは異なるが、フラストレーションを含むという点でスピングラスより基本的な系と言える。本研究では連続虚時間量子モンテカルロ法を用いていくつかの物理量を計算し、温度-横磁場を軸とする相図を決定した。本研究は四角酸という物質で行われた実験を定性的に説明するだけでなく、強いフラストレーションがある系における普遍的な性質の一端も明らかにした。
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