2008 Fiscal Year Annual Research Report
中性原子気体を舞台とした異方的超流動の定量的研究の展開とマヨラナ粒子の探索
Project/Area Number |
20740233
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
水島 健 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 助教 (50379707)
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Keywords | 超流動 / ボース凝縮 / 量子エレクトロニクス |
Research Abstract |
中性原子気体の極低温下で実現が期待されるp波超流動相の特異な性質について微視的理論に基づいて調べた。この原子気体をかき混ぜることで、系は量子渦を生成し角運動量を獲得する。量子渦は超流動秩序変数の位相構造の特異点として定義される。特にp波超流動相では、秩序変数の持つ軌道自由度と結合することで非自明な位相構造を生み出される。この秩序変数の位相構造は低エネルギー準粒子励起構造を決定するために重要である。特に, 2次元空間に制限されたp波超流動相では量子渦に束縛された準粒子励起が存在し、その最低エネルギーは厳密にゼロになることが指摘されていた。我々は微視的理論の数値解析に基づいて、現実的な状況においてもこの零エネルギー準粒子励起が存在することを示し、その安定性を議論した。中性原子気体系の特筆すべき点としてフェッシュバッハ共鳴を利用した相互作用の自由な制御が挙げられる。近年ではs波相互作用に加えて、p波相互作用も制御可能になった。このような実験的な発展をふまえて、2原子間に弱いp波型引力が働くことで形成されるp波クーパ対のBCS状態から、強い引力によって形成される2原子分子ボソンのボース凝縮相(BEC)にわたる広範囲において、零エネルギー準粒子の安定性を議論した。s波超流動体で実現されるBCS-BECクロスオーバーと異なり、p波超流動体ではBCS相とBEC相はトポロジカルに異なり、両相はトポロジカル相転移により結ばれる。我々は零エネルギー準粒子はBCS相のみで安定であり、トポロジカル相転移近傍では互いの干渉効果により零エネルギー準粒子は不安定化することを示した。また、零エネルギー準粒子はマヨラナ型粒子として特異な性質を示し、量子演算への応用も期待されている。我々は、このマヨラナ粒子の存在が観測可能な物理量へ及ぼす影響も調べた。これら一連の結果はPhysical Review Letters誌に掲載された。 さらに、p波超流動転移が確立されている3HeのA相において、このようなマヨラナ粒子を伴う量子渦の生成のための条件を明らかにした。この解析には上記で用いた微視的理論に加えてGinzburg-Landau理論が援用され、この定量的な数値解析により、2次元平行板間に閉じ込められた3Heを約0.1rad/sec程度で回転させることで、マヨラナ粒子を伴う量子渦が生成されることを明らかにした。これは既存の実験環境で容易に到達可能な領域であり、現実的なマヨラナ粒子の観測を期待させる。これらの成果は論文としてまとめられてPhysical Review Letters誌に掲載された。
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Research Products
(15 results)