2008 Fiscal Year Annual Research Report
電解質溶液のモル電気伝導度極小に対するFuoss-Krausモデルの再検討
Project/Area Number |
20740240
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 毅 Nagoya University, 大学院・工学研究科, 助教 (80345917)
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Keywords | 電解質溶液 / 積分方程式理論 / モード結合理論 / 電気伝導度 / 誘電緩和 |
Research Abstract |
分子性液体の積分方程式理論であるRISM理論を基礎として、会合性電解質溶液の構造を計算する手法を開発した。既存のWertheim理論と比較すると、近距離構造、会合定数は同程度であり、Wertheim理論に存在していた、非物理的な長波長極限を改善することができた。 本手法で計算した液体構造を入力パラメータとして、モード結合理論を用いて、モデル電解質系でのモル電気伝導度の濃度依存性を計算した。イオン間の静電相互作用が強い場合には、イオン間の会合の強さに関わらず、モル電気伝導度の濃度依存性に極小が見られた。解析の結果、会合が強い場合のモル電気伝導度極小は、FuossとKrausにより提案されたトリプルイオンモデルで説明されるが、会合が弱い場合には、これまでは考慮されていなかった、長波長での電荷揺らぎによる協同運動が、モル電気伝導度極小の原因となっていることが明らかとなった。また、両者の機構の違いを実験的に明らかにするためには、NMRによる拡散係数測定が適切であることを理論的に示した。 モル電気伝導度極小が報告されている、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTf)、および、トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム(TBATf)のテトラヒドロフラン溶液で、マイクロ波反射法により、50MHz〜20GHzの電気伝導度分散を測定した。両溶液ともに、1GHz近傍に緩和が見られたが、その緩和時間の濃度依存性は,LiTfとTBATfとで異なっており、両者のモル電気伝導度極小の機構が異なっている可能性が示唆された。次年度は、拡散係数測定及び理論的解析による更なる検討が必要と考えられる。
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Research Products
(3 results)