2009 Fiscal Year Annual Research Report
電解質溶液のモル電気伝導度極小に対するFuoss―Krausモデルの再検討
Project/Area Number |
20740240
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 毅 Nagoya University, 工学研究科, 助教 (80345917)
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Keywords | 電解質溶液 / 電気伝導度 / イオン会合 / モード結合理論 / 分子シミュレーション / 誘電緩和 |
Research Abstract |
・ 前年度のモード結合理論(MCT)による計算でモル電気伝導度極小が見られた系に対応するソフトコアポテンシャルの系で、ブラウン動力学シミュレーションを行い、MCTで得られたモル電気伝導度極小が、理論の近似によるものではないことを確認した。また、シミュレーションで見られた極小が、MCTで示されていた通り、イオン雰囲気の緩和に関連した動的な機構によるものであることも示した。 ・ モル電気伝導度極小が見られ、電気伝導度分散の緩和周波数が濃度と共に増加するという、理論とシミュレーションに対応する実験結果が得られている、テトラフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウムのテトラヒドロフラン溶液について、パルス磁場核磁気共鳴法で各イオンの自己拡散係数の濃度依存性を測定した。自己拡散係数は濃度の単調減少関数であり、Nernst-Einstein式で自己拡散係数から計算されるモル電気伝導度は、実測のものより一桁以上大きかった。これらの結果はMCT計算およびシミュレーションの結果とは対応しておらず、斥力コア+クーロンカで相互作用するモデルでは、実在の電解質溶液の動的性質の特徴を捉え切れていない。 ・ モデルの改良のため、溶媒の排除体積に起因する平均力ポテンシャルを模した実効二体ポテンシャルを異種イオン間相互作用に加算した系を構築し、ブラウン動力学シミュレーションを行った。自己拡散係数の濃度依存性に見られていた極小は消失し、モル電気伝導度は自己拡散係数と比較して大きく減少し、現実系の特徴により近い計算結果が得られた。このことは、電解質溶液の動的物性を考える上で、溶媒を分子として取り扱うことが本質的に重要であることを示している。
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