2009 Fiscal Year Annual Research Report
太陽系始原天体でおこる衝突現象のその場観測手法を用いた実験的研究
Project/Area Number |
20740249
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
山本 聡 National Institute for Environmental Studies, 地球環境研究センター, NIESポスドクフェロー (20396857)
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Keywords | 衝突クレーター / 衝突実験 / スケーリング則 / 太陽系小天体 / 斜め衝突 |
Research Abstract |
本研究では、衝突クレーター形成の直接観測を行い、スケーリング則に対する衝突角度依存性及び物性効果を明らかにする事を目的としている。21年度は、クレーター形成過程における掘削および放出過程の物性効果を調べた。本研究により開発した直接観測用の一段式簡易ガス銃を用いて球形弾丸を200-300m/sに加速し、標的(ソーダライムガラスビーズ)に衝突させた。標的には1本~複数本のレーザー光(赤色および緑色)が照射されているため、クレーター形成に伴ないレーザ光と標的・放出物の接線の位置が変化する。この様子を高速ビデオカメラを用いて撮像し、放出物が標的外に放出される位置の時間変化の測定を行った。その結果、放出物の衝突点からの放出位置は、時間に対してべき乗則に従って増加すること、またクレーター形成の終段階においてはべき乗則から外れ、放出速度が指数関数的に減衰することを明らかにした。また、標的物性値(空隙率、内部摩擦角、音速)が異なるガラスビーズを用いて、同測定を繰り返した結果、この終段階の減衰率は物性依存性を示すことがわかった。これらの結果を基にして、Zモデル(掘削流に対する流体近似モデル)において粒子速度場の強度が時間に対して指数関数的に減衰すると仮定し、放出物速度の時間発展式を導出した。その結果、この新しいモデル式は、本実験で得られる様々な標的物性に対して、放出物速度の時間発展をよく再現することが分かった。次に、かぐや月探査によって取得された、巨大クレーター周辺での特定鉱物スペクトル分布データに対してこのモデル式の適用を行い、特定鉱物の起源(掘削された深さ等)について検討を行った。その結果を基にして、スケール依存性を考慮したクレーター形成過程の物理解釈を行い、天体スケールでの衝突クレーター形成過程における標的物性効果依存性について明らかにした。
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