2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20740257
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山下 直之 Waseda University, 理工学術院, 講師 (90398933)
|
Keywords | 月・衛星・小惑星 / 惑星形成・進化 / 元素分布 |
Research Abstract |
惑星探査においてはゲルマニウム結晶を極低温で冷却し続けることが望ましいが、実運用中は衛星や機器の状態に応じて冷凍を中断する機会が頻繁にある。観測に迅速に移行できるかどうかは冷却速度にかかっており、十分な観測時間を確保する上で重要である。また度重なる温度変化は冷凍機を含む冷凍機構に大きな負担を与えるものであり、本研究で製作したモデルがこうした要求に耐えうるかどうか実験により検証を行った。各検証項目及び結果は以下の通りである。 A. 冷却速度試験:冷凍機運転開始後の時間とダミーGe結晶温度を時間の関数として測定した。その結果、約20時間で82.6Kまで達することを確認した。これは、月探査衛星「かぐや」に搭載された高精度ガンマ線分光計の仕様(24時間以内に90K以下)を超えるものであり、実用に耐えうるものと判断できる。 B. 消費電力:最大0.7Wで観測可能温度到達を確認した。これは「かぐや」搭載品の約1/3である。 C. 長期運転試験:長期間運転試験時に温度が下がらなくなる現象に見舞われた。検証の結果、真空度の劣化、及び冷却部品の劣化が判明した。これら問題点を改善し、再実験の条件が整った時点で主研究者の異動により、本研究は継続が不可能となったため、長期運転試験は終了することができなかった。しかしながら、平成20年12月に行われた打上時振動試験後も十分な冷却速度を保っていたことから、熱設計上及び構造上の性能は長期間保たれたと推測する。 本研究の結果、月探査衛星「かぐや」搭載品と比べ、冷凍機は消費電力を1/3、重量を1/10まで抑えることに成功した。これにより高精度ガンマ線分光計の小型衛星への搭載へはずみがつくものと期待される。 また、フランスの研究者との議論の中で、欧米の宇宙機関で使用実績のあるイスラエル・Ricor社製高性能冷凍機K508の詳細な情報を取得し、今後の検討課題とした。
|