2008 Fiscal Year Annual Research Report
三次元マントル対流モデルによるプルームモードとプレートモードの発生機構の解明
Project/Area Number |
20740260
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
吉田 晶樹 Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, 地球内部変動研究センター, 研究員 (00371716)
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Keywords | マントル対流 / 数値シミュレーション / プレート運動 / トモグラフィー / 粘性率 / スラブ / コア・マントル境界 / ジオイド |
Research Abstract |
今年度は、マントル対流の大規模上昇流の発生メカニズムやプレート運動に支配されるマントル対流独自の流れのモードを解明するために、マントル対流の三次元球殼モデルを用いて、(1)マントル対流の時間発展計算、及び(2)全球地震波トモグラフィーモデルを考慮した瞬関速度場計算の二つのアプローチで研究行った。(1)に関しては、マントルの放射性熱源による内部発熱、粘性率の温度依存性、圧縮性など様々な条件を考慮した系統的なパラメータ計算により、マントル対流の基本的な大規模構造が、次数1モード(一つの上昇流と一つの下降流を持つパターン)、及び"逆次数2"モード(現在の地球マントルとは逆で二つの円筒状下降流を持つパターン)の二つであることを発見した。さらに、降伏応力を用いたレオロジーを考慮した計算を行い、実際の環太平洋の沈み込み帯に似た、全球規模に連なる一本の細長い収束境界を含んだマントル対流パターンを実現した。この結果は、マントル対流シミュレーションで得られる対流の温度・速度構造が、現実の地球の対流パターンにさらに近付いたことを意味する。(2)に関しては、トモグラフィーモデルを用いることにより、コア・マントル境界の地形を数値シミュレーションの手法を用いて世界で初めて見積もり、近年の地震学的観測で得られつつある結果との比較・議論が可能になる足がかりが得られた。この成果は未だよく分かっていないコア・マントル近傍のダイナミクスの解明に重要である。また、環太平洋の沈み込み帯における正の長波長ジオイドを説明するためには、(a)上部マントルと下部マントルの粘性率比が2〜3桁必要であること、(b)近年の鉱物物理学で示唆されているように下部マントルに沈み込むスラブの粘性率は上部マントルスラブの粘性率よりも有意に小さいことが分かった。これらの結果は、(1)で用いたマントル対流モデルの今後の改善に重要である。
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