2010 Fiscal Year Annual Research Report
さまざまな大規模赤道波に伴う対流雲発達過程の観測研究:統一的理解に向けて
Project/Area Number |
20740269
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
増永 浩彦 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 准教授 (00444422)
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Keywords | 熱帯気象学 / 積雲対流 / 衛星リモートセンシング / 大気海洋相互作用 |
Research Abstract |
前年度において、衛星観測をもとに海洋混合層の熱収支を解析する方法論を構築し、東太平洋の赤道収束帯(ITCZ)の形成・維持機構を明らかにする研究を開始した。その結果をもとに、通常赤道の北側だけに存在する熱帯東太平洋のITCZが3月から4月にかけての限定的な期間に限り南半球側にも発達する要因を同定した。平成22年度ではその解析手法をさらに改良し、3-4月をのぞく一年の大半にわたりITCZが北半球側のみに存在する要因について、衛星観測データに基づく検討を行った。以下に本年度の成果をまとめる。 1.海洋混合層の熱収支において、南北半球間の非対称にもっとも貢献する要因は、水平移流の効果であった。これは、ITCZ非対称性を潜熱(蒸発)フラックスを通じた風速と海面水温間のフィードバック機構で説明する従来の理論(WESフィードバック説)に大幅な変更を迫る観測結果である。 2.水平移流の南北非対称性は、中米沖の暖水域と南米沖の冷水域の水温コントラストが、南北赤道流によりITCZ全域に影響を与えるためと説明できる。また、寄与は小さいが赤道反流の影響もある。 3.さらに、季節変化の振幅が赤道の南北で大きく異なることが、非対称性の維持に重要であることを明らかにした。南半球は北半球に比べ夏冬の日射量変化が大きいこと(地球軌道がわずかに楕円である効果)など複数の要因の複合的な結果として、南半球では秋季をのぞいて高いSSTを維持できない一方、季節変化の小さい北半球側ではITCZ下で高いSSTが年間を通じて維持される。
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