2010 Fiscal Year Annual Research Report
高精度データ同化システムの開発による大気微量成分の濃度予測可能性の検証
Project/Area Number |
20740275
|
Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
関山 剛 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (90354498)
|
Keywords | データ同化 / 数値シミュレーション / アンサンブル・カルマン・フィルタ / オゾン / エアロゾル / 黄砂 / 予測可能性 |
Research Abstract |
成果: 研究開始から2年間をかけて開発改良を進めた高精度データ同化システム(全球エアロゾルモデルおよび4次元アンサンブル・カルマン・フィルタのカップリング)を用いて、黄砂エアロゾルと硫酸エアロゾルの解析値(2007年春季)を作成した。観測データには、人工衛星CALIPSOに搭載されたライダー装置によって得られた大気の光学的情報を利用した。ライダー観測は鉛直解像度と時間解像度が極めて高いが水平視野が極端に狭いという特徴があり、その観測データの利用方法が難しいのだが、我々のデータ同化解析によって最大限にその観測情報を活用することが可能となった。この解析値には黄砂および硫酸エアロゾルの大気中濃度分布のほかに、黄砂エアロゾルの発生源(砂漠などの乾燥地表面)における放出強度の推定値も含まれている。この放出強度情報は高精度データ同化システムによる逆解析によって初めて広範囲に得られるようになったものである。 このエアロゾル解析値(大気中濃度および地表面放出強度)を予測初期値として用い、東アジアにおける黄砂分布のハインドキャスト実験(=過去の現象の予測計算を行い、その結果を既知の観測によって採点する予測検証手法)を行なった。この予測結果を独立観測値と比較することによって、初期値の改善が予測精度の著しい向上に繋がることを確認した。エアロゾル予測の場合、その予測誤差は主に発生量の推定誤差であり、その推定誤差は気象要素(大気中の物質の流れを支配する風向風速)の予測誤差に比べて桁違いに大きいことが確認された。 意義・重要性: 上記の成果は大気微量成分のデータ同化実験として世界最高水準の技術力であり、そのプロダクトであるエアロゾル解析値は気候変動予測の研究あるいは中長期天気予報の改善に必須の情報である。また、黄砂分布の予測誤差の原因を定量的に把握できたことは黄砂現象の科学的理解に対して大きな貢献となった。
|