Research Abstract |
平成22年度は,前年度までに得られた成果のとりまとめを行い,学術誌に論文として発表するとともに,そこで得られた知見に基づき,新たな数値的・実験的研究に取り組んだ. まず,Large-Eddy Simulationに基づいた数値実験を通して,乱流の2次の統計量の自己整合性の検証についての解析手法を論文としてとりまとめ,Journal of the Meteorological Society of Japanに投稿,受理された.さらに,多くの気象モデルで用いられている乱流モデルであるMYNNモデルについて,安定成層の場合の定式化について検討を行った.先行研究では,フラックスリチャードソン数には上限があり,臨界リチャードソン数は存在しないことが指摘されている.この知見に基づいて,MYNNモデルについて見直しをはかり,新たな定式化を考案した.この結果については,Journal of the Meteorological Society of Japanに投稿,受理された. フラックスリチャードソン数や乱流プラントル数が大気安定度にどのように依存するかは,MYNNモデルをはじめとした乱流クロージャモデルの妥当性を検討するうえで重要な役割を果たしており,したがってこれらの統計量を定量的に同定することが必要である.本年度は,これらの統計量に着目し,Large-Eddy Simulationや大型実験風洞を用いた数値的・実験的研究を実施した.その結果,境界層上端ではフラックスリチャードソン数が1を超える可能性があることが明らかとなった.また,このような領域では,乱流運動エネルギーの鉛直輸送や圧力・速度相関といった非局所的な効果が重要な役割を果たしていた.この結果は,従来の研究では指摘されていなかったことであり,クロージャモデルの設計において重要な示唆をもたらすものと考えられる.
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