Research Abstract |
今年度は,過去最高の解像度を含む,水平格子点間隔11,22,44,89kmの解像度で火星大気大循環モデルを用いた実験を実施した.今回実施した実験は,火星大気大循環計算としては世界最高の解像度であり,これまでに知られていなかった小規模大気擾乱の調査や,そのダスト巻き上げへの影響を調べることが可能となった. 実験結果には,傾圧不安定波動に伴う前線,様々な水平スケールの山に起因する渦や水平シアー,対流に起因すると思われる小規模渦といった,様々な種類の大気擾乱が見られた.しかし,異なる解像度の結果の比較によると,対流に起因すると思われる小規模渦の水平スケールは解像度に依存していることがわかった.解像度を高くすると個々の渦の水平スケールは小さくなり,今回行った最高の解像度においても,渦のスケールは収束していないようである. 一方,各解像度でモデルの中で診断されるダスト巻き上げ量の全球積分値を調べた結果,解像度が高くなるにしたがって全球積分ダスト巻き上げ量が増加することが示された.このことは,モデルにおいて高い解像度で表現される小規模擾乱がダスト巻き上げに寄与していることを示している.また,感度実験として,火星の地形の起伏がなく,地面のアルベドや熱慣性が一様な条件で行った実験におけるダスト巻き上げ量と比較してみると,それら地形の起伏,アルベドと熱慣性の空間分布に起因する擾乱もダスト巻き上げに重要な寄与をしていることが示された.
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