Research Abstract |
本研究では沿岸域の巨礫から津波によって運ばれたものを抽出する手法を確立し, さらにそれらの巨礫を用いて古津波の規模の推定を行うことを主目的としている。そのためには, 津波で運ばれた巨礫群と, 台風の高波で運ばれた巨礫群の特徴の違いをまず明らかにする必要がある.そこで, 本年度は沖縄県久高島および石垣島沿岸域に分布する巨礫群の位置とサイズの測定を行った。 久高島では, 210個の巨礫群を測定した.その結果, (1) 巨礫群は礁縁から275m以内の範囲にのみ分布すること, (2) 礁縁から内陸に向けて, 指数関数的にサイズが小さくなること, (3) 2007年7月に台風に伴い発生した既往最大の有義波によって, 現在の分布が説明できることがわかった.そこで, この分布と2007年7月の有義波との関連付けを行い, 任意の高波による巨礫運搬距離を明らかにする方法を考案した. 一方, 石垣島では, 礁縁から1〜1.5km離れた高潮線付近に数百トンもの巨礫が密集している様子が観察された.これらの巨礫は, 久高島に分布する巨礫群から推定される, 高波による巨礫移動限界をはるかに超え, かつ重量が極めて重いという特徴がある.そのため, 水理学的に考えて, これらの巨礫群は台風の高波では説明がつかず, より周期の長い津波により運搬されたものと考えられる.石垣島の巨礫群は, 1771年明和津波により運搬された可能性が, 古文書の研究や年代測定から示唆されており, 本研究の結果は, 水理学的検証により, これらの先行研究を支持するものである.
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