Research Abstract |
本研究では,沿岸域の巨礫から津波によって運ばれたものを抽出する手法を確立し,さらにそれらの巨礫を用いて古津波の規模の推定を行うことを主目的としている.本年度は,津波と台風の高波により運搬された巨礫の違いをさらに明らかにするため,沖縄諸島および奄美諸島における巨礫群調査を実施した.これまで沖縄県・久高島で調査を行い,台風の高波で運搬された巨礫群は,礁縁から指数関数的にサイズが減少すること,礁縁から約300mの範囲内の礁原上に分布することが確認できた.今年度はさらに,巨礫が点在する久高島周辺の他島(津堅島)や,波浪条件が異なる島(奄美諸島)では,台風の高波に伴う巨礫がどのような分布傾向を示すのか調査した.その結果,津堅島,奄美大島のいずれでも,久高島と同様の巨礫分布を示すことが明らかになった.これは,沖縄諸島,奄美諸島において,台風の高波の強さはほぼ同規模であることを意味している.通常,過去に発生した高波の波高は統計的手法に頼らざるを得ないが,リーフ上に存在する巨礫群の分布を用いれば,過去の高波の規模を推定できる可能性があることがわかった.言い換えれば,琉球列島において台風起源の巨礫群は明確に識別でき,その基準を上回る重量,位置に存在する巨礫は,津波起源と考えられる.そして,津波起源の巨礫群は,宮古-八重山諸島にのみ集中的に存在することがわかった.津波により運搬された巨礫群を数値モデルを使って解析すれば,巨礫を運搬しうる津波の波高・周期を推定できると期待される.
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