Research Abstract |
本研究では,沿岸域の巨礫から津波によって運ばれたものを抽出する手法を確立し,さらにそれらの巨礫を用いて古津波の規模の推定を行うことを主目的としている.本年度は,沖縄諸島や宮古-八重山諸島のリーフ上において,巨礫分布に関する現地調査を行なった.具体的には,巨礫のサイズ,空間分布および長軸の方向や密度の測定を行った.その結果,沖縄諸島においては台風起源と考えられる巨礫しか存在しないものの,宮古-八重山諸島においては,津波起源および台風起源の巨礫の両方が存在することがわかった.沖縄諸島においては,既往最大の台風の高波の外力を推定できる可能性があるのに対し,宮古-八重山諸島では,台風の高波の外力のみならず,津波外力を推定できる可能性がある。そこで,巨礫のサイズや移動距離のみから,津波のどのような水理量が推定できるのか調べた.その結果,巨礫の空間・サイズ分布から,津波の波高と周期の組み合わせを推定できることが明らかになった.また,1771年明和津波を対象として,波源モデルの推定を行なった.その結果,海溝型巨大地震よりも,内陸寄りの海底断層とそれに付随する海底地すべりを仮定することにより,古文書・地質記録から推定された宮古-八重山諸島の遡上高分布を制度よく再現できることが明らかになった.このモデルを用いて,石垣島や水納島などの巨礫の移動過程を解析したところ,推定される初期位置からほぼ現在位置まで移動することがわかり,波源モデルの妥当性を示すことができた。
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