2009 Fiscal Year Annual Research Report
プチスポット総合研究-太平洋上部マントル不均質性の実態とマグマ生成過程の解明
Project/Area Number |
20740293
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
町田 嗣樹 The University of Tokyo, 海洋研究所, 特任研究員 (40444062)
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Keywords | 地殻・マントル物質 / 地球・惑星内部構造 / プチスポット / 火山 / 地球化学 |
Research Abstract |
かんらん石の化学組成分析については、高い電子線加速電圧と長い測定時間により高精度のデータを得る分析ルーチンを確立した。この分析法により、マグマから晶出したかんらん石は、Niの含有量が高くMnの含有量が低い(低Mn/Fe)ことが判明し、マグマ生成に対するリサイクル物質の寄与程度は、80-90%以上と見積もられた。 新たなプチスポット火山の全岩化学組成データを、上記の高精度かんらん石データを踏まえて解析した結果、北西太平洋で活動する多数の火山群は、起源物質の違いで大きく2種類に分類されるものの、火山毎に、ア)起源物質のわずかな組成変化があり、イ)同時に部分溶融度も異なること、が定性的に示された。つまり、小さな火山毎に、起源物質の性質とマグマ生成から噴火に至る過程は独立しており、個性豊かな独自のマグマシステムを形成している。マグマ起源物質については、これまでに、大陸下部地殻もしくは交代作用を受けたリソスフェアマントルである可能性が高いことが判明していたが、火山毎に起源物質の組成や部分溶融度が異なるという上記の結果を踏まえると、出発物質の組成を仮定した溶融モデリングでは、全ての火山に対して統一的かつ定量的な起源物質の特定には至らなかった。ただし見方を変えると、太平洋上部マントルの小規模な不均質性(Machida et al.,2009)が、予想以上に多種のリサイクル物質に起因するという実態が明らかになったと捉えることができ、この事は、全地球の物質循環を理解するうえで重大な制約を与える成果である。 以上に加え、チリ海溝沖の太平洋で発見した複数の海丘より得られた玄武岩の全岩化学組成とSr-Nd同位体組成分析を行った。その結果、これらの海丘がいずれもプチスポット火山であることが確認され、北西太平洋で2種類に大別された火山の1つに対応することが判明した。つまり、プチスポット火山活動は、少なくとも太平洋では普遍的な現象であると同時に、小規模マントル不均質が太平洋全域に及ぶことが証明された。
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