Research Abstract |
化石化した生物体硬組織の成長に伴うフォルム変化に,"呼吸"の機能的意義を"代入"することで,化石生物の運動特性を定量的に推定してゆくことが本研究の目標である.従って,呼吸機構を踏まえた上でのデータ解析が求められる.三葉虫の呼吸機構に関するSuzuki et al., 2008とSuzuki & Bergstrom 2008に基づいて,それぞれの形態型種(1)Stenopareia oviformis,(2)Nileus armadillo,(3)Asaphus fallax,(4)Isotelus gigas,(5)Aulacopleura koninki,(6)Elrathia kingiについて,形態の三次元形状スキャンを行ったのち,呼吸領域および鯉静脈領域のそれぞれ表面積と体積の算出を行った.同一種でサイズが異なる標本群で同様の値を求め,成長に伴う変化率を算出することを目的としている.三葉虫の外骨格は,頭部,複数の胸節,尾部と複数の硬組織パーツを有するため,体積および表面積算出に至る行程を各パーツで行わなくてはならない.尾部のみのアロメトリー値に基づくと,鯉静脈領域が呼吸領域に対して,予想通りに(1)(2)>(3)(4)>(5)(6)の関係となった.この関係性は,呼吸機構を,突発性もしくは恒常性のどちらをより重視するのか,値が大の場合は前者、より低い場合は後者ということになる.同様の傾向が頭部や胸部でも認められるのかについては,現在進行中である.
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