Research Abstract |
溶存Siには, 単量体(Si(OH)_4, SiO(OH)_3^-), 二量体(Si_2O_2(OH)_5^-), コロイドなど, 様々な化学形態があり, その化学形態はpHや溶存Si濃度によって変化する. 岩石間隙水中の溶存Siの拡散係数と化学形態との関係を調べるために, 溶液のpHを変化させて透過拡散試験を行った. 透過拡散試験では, 2つの水槽の間に岩石試料を固定し, 片方の水槽には拡散させる元素の高濃度溶液を, もう片方には純水を入れる. そして, 岩石を通過して出てくる元素の濃度の経時変化を測定することで拡散係数を決定する. 実験には, 多孔質流紋岩を試料として用いた. この試料の比表面積は, BET法(窒素ガス吸着)により0,34m^2/gと測定された. 従来拡散係数の報告例が多いK^+およびCl^-と, 溶存Siの拡散係数とを比較するために, 高濃度側はK^+, Cl^-, Siの濃度が等しくなるように調節し(〜2m mol/L), それぞれの元素について拡散係数を測定した. 室温でのSiの拡散係数は, pH7とpH10とで有意な差は認められなかった. pH7では, 溶液中のSiは全て電荷ゼロのSi(OH)_4として存在する. 一方pH 10では, 陰イオンのSiO(OH)_3^-の存在割合が高い. pH7とpH10とでSiの拡散係数にあまり違いがなかったことから, 溶存Siの電荷が拡散係数に及ぼす影響はあまり大きくないと考えられる. また, 同じpHでは, 拡散係数はK^+〓C1^->Siとなった. バルク水中でのK^+, Cl^-, Siの拡散係数の文献値はほぼ等しいことから, 間隙水中でSiの拡散係数が他の元素より小さいのは, 岩石間隙表面との相互作用がSiと他の元素とで異なっていることを示している可能性が考えられる.
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