2009 Fiscal Year Annual Research Report
剪断歪に伴う高結晶度マグマからのメルト絞り出しプロセスの解明
Project/Area Number |
20740310
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
川畑 博 Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, 地球内部ダイナシクス領域, 技術研究副主任 (90392943)
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Keywords | 剪断歪 / 残液濃集層 / 溶岩流 |
Research Abstract |
固液分散系に生じる粘性変化と組織変化を検証するため、個別要素法(DEM)、と数値流体力学モデルCFDをカップリングさせた数値シミョレーションを行った。計算では、ニュートン流体中に板状粒子を分散させた固液混合物に、一定の歪速度で単純剪断をかけた。シミュレーションの主要な結果は次の2点にまとめられる。1)5から40vol%のいずれの粒子濃度においても、歪量の増加とともに板状粒子の回転、再配列が起こり、粘性が減少する。ある一定歪量をこえると、粘性および組織が定常状態となる。定常状態ではドメイン組織が発達し、それは結晶定向配列と結晶濃度の異なる2つの領域から構成される。2)分散系の結晶濃度が増加すると、板状結晶の定向配列強度が下がり、板状粒子長軸の平均定向配列方位は、より高角で剪断面と斜交するようになる。このような自己形成組織は次の2つの要因によって生み出されると考えられる。1つは、板状結晶の方位と最大圧縮応力軸との幾何学的関係であり、2つめは粒子-液体、粒子-粒子間の相互作用である。前者は、局所的な結晶濃度をコントロールする。一方、後者は剪断にともなう粒子回転の角速度を低下させる役割をもつ。この2つの要因により、ドメイン組織の形成と粘性変化、さらに結晶量による組織変化が説明できる。今回のシミュレーション結果は、マグマの流動に伴って生じた組織の形成過程について重要な知見を与える。たとえば、溶岩流中に残されたS/C typeのドメイン組織はこれまで考えられていた2スラージの進化を経て形成されるのではなく、結晶に富むドメインとメルトに富むドメインが同時に形成される。S/C typeのドメイン組織は溶岩が与られた条件でもっとも粘性の低い状態となる、定常状態組織を表していると推定される。
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