2008 Fiscal Year Annual Research Report
深部マントル起源物質の希ガス・ハロゲン多元素同時分析によるマントル進化過程の解明
Project/Area Number |
20740314
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
角野 浩史 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (90332593)
|
Keywords | 地球化学 / 地殻・マントル物質 / 地球・惑星内部構造 / 同位体 / 質量分析 / 希ガス / ハロゲン / 中性子照射 |
Research Abstract |
本年度は、中性子照射による核変換を応用した、希ガス・ハロゲン及びその他元素の多元素同時分析の手法を確立することを目指した。これに用いる東京大学アイソトープ総合センター設置の希ガス質量分析システムは、当センターの耐震補強改修工事のため平成20年度始めまで停止していたが、その再立ち上げを機会に試料加熱炉の更新と希ガス精製ラインの改良を行った。この作業に約半年間を要したが、従来よりも一桁低いブランクを達成でき、また多元素同時分析に必須な、希ガス元素ごとの分離も可能になった。テストケースとして、落下回収量が多く分析値も多く報告されているAllende隕石と、標準岩石JG-1と同じ露頭で採取した花商岩から分離した黒雲母(JG-1Bt)について本手法による分析を行った。Allende隕石ではこれまでの報告値と矛盾しないK、Ca、Cl濃度とAr-Ar及び1-Xe年代が得られた。一方、幅広い濃度が報告されているIについては、そのほとんどが地表におけるコンタミネーション由来である可能性が示唆された。JG-1Btについては、今後他の手法を用いて比較すべき分析値を得ていく必要があるが、KとClについてはそれぞれ原子吸光分析及び即発γ線分析による分析値と矛盾ない結果が得られた。 一方非照射試料の希ガス同位体分析については、希ガス質量分析計のイオン源の更なる高感度化のために、制御用高圧電源の改造と、解析ソフトウェアを用いたイオン軌道シミュレーションによる電極電圧の最適化を行った。またレーザーを用いた希ガス局所分析の手始めとして進めてきた. 雲仙火山溶岩中の斜長石斑晶のAr同位体分布を明らかにした成果を学術雑誌にて発表したほか、東赤石カンラン岩中に、太古に沈み込んだ海水の痕跡を希ガスから見出した成果を学会で報告した。
|