2009 Fiscal Year Annual Research Report
深部マントル起源物質の希ガス・ハロゲン多元素同時分析によるマントル進化過程の解明
Project/Area Number |
20740314
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
角野 浩史 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (90332593)
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Keywords | 地球化学 / 地殻・マントル物質 / 地球・惑星内部構造 / 同位体 / 質量分析 / 希ガス / ハロゲン / 中性子照射 |
Research Abstract |
研究期間の最終年度である本年度は、前年度に確立した、希ガス・ハロゲン及びその他元素の多元素同時分析の手法を、天然のマントル起源物質に応用する予定であった。しかし、ハロゲン-希ガス変換に必要な中性子照射が、原子炉の度重なる運転トラブルのために一度も実施できず、試料の調整ができなかった。そのため本年度は、前年度のうちに照射を完了していた、産業総合研究所地質調査所と米国地質調査所発行の岩石標準試料の分析により、本分析手法による定量値の評価を行った。標準岩石試料10種15試料について、これまでの報告値とよく合うK、Ca、Ba、U濃度とAr-Ar年代が得られた。一方、ハロゲン(Cl、Br、I)濃度については、文献値よりも系統的に小さい濃度が得られ、ハロゲン濃度が小さい試料ほどその傾向が顕著であった。本手法では、ハロゲンから核変換した希ガス同位体を超高真空下で抽出して分析するため、試料表面に吸着していたハロゲン由来の希ガスは、分析前の真空排気により失われる。従って、岩石試料内部に含まれているハロゲンのみを選択的に分析できるという大きな利点があり、このため試料表面の吸着成分も含めて分析した文献値と異なる結果が得られたと解釈できる。この成果は既にいくつかの学会で報告している。 また、沈み込み帯の最深部のマントル物質の希ガス同位体組成を決定するべく、四国・三波川変成帯の東赤石カンラン岩と、カザフスタン・コクチェタフ超高圧変成帯に産するマイクロダイヤモンドの分析を進めた。その結果、東赤石では間隙水が深さ100kmのマントルまで到達していること、コクチェタフでは深さ200kmのマントルに、さらに深部のマントル最下層から希ガスが運搬されていることを明らかにし、いずれも論文・学会発表として公表した。
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