Research Abstract |
核融合実験炉における炉心プラズマ加熱のために,H^-イオン源の高効率化が望まれている.イオン源からのH^-引き出し効率を上げて高効率化を図るためには,H^-引き出しのキーファクターとなる,引き出し孔近傍のプラズマ電位の情報を得た上で,引き出し孔近傍でのH^-の輸送を知る必要がある.そこで本研究では,1.イオン源引き出し孔近傍のプラズマの電位構造を明らかにするために2次元Particle-In-Cell (PIC)法による自己無撞着な計算を実施した.さらに2.Monte Carlo法による3次元H^-軌道計算にて,イオン源からのH^-引き出し確率を計算した.なお,2の軌道計算に必要な,プラズマ電位の空間構造は,実験結果と1のPIC計算の結果を参考に仮定して導入した. 1のPIC計算では,実験データではフォローできない領域のプラズマの電位構造を計算で捕外した.我々の実験で観測できる引き出し孔から0.3cm以上離れた領域では,プリシースの影響によって,ビーム軸方向に沿って,引き出し孔に近づくほど空間電位は低くなる.これがH^-の引き出しにとって電位障壁となる.しかしながら今回のPIC計算によって,引き出し孔から0.3cm以内の領域に,電位の極小値が存在し,ここを境に電位勾配が逆転,H^-を引き出し孔方向へ引き込む電場に変化している事を確認した. 上記PIC計算によって実験データを補外した電位構造を,2のH^-軌道計算へ導入してH^-引き出し確率を計算した.結果,昨年度までは引き出し確率の値のみ実験とよく一致する状態であったが,PICの計算結果を反映させることで,H^-引き出し確率の空間分布の傾向も含めてうまく再現でき,より信頼性の高いH^-引き出しモデルの構築に成功した.なお,3次元的な電位構造を導入する事によって,H^-引き出し確率を飛躍的に増大させることができるが,この主たる原因が,ビームに垂直な方向の空間電位構造であることが,本モデルによる計算で明らかになった.
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