2008 Fiscal Year Annual Research Report
真空紫外光イオン化検出振動分光法開拓による水素結合ネットワーク構造の研究
Project/Area Number |
20750002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松田 欣之 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 助教 (70400223)
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Keywords | クラスター / 赤外分光 / 真空紫外光イオン化 / ラマン分光 / 分子間相互作用 |
Research Abstract |
三種の新しい真空紫外光イオン化検出振動分光法を独自開発したことに基づき、分光システムの改良や気相クラスターの振動分光研究を行った。 これまで固定波長の真空紫外光が真空紫外光イオン化検出振動分光法に用いられてきたが、差周波発生による波長可変真空紫外光発生システムを立ち上げ同分光法に応用し、分光法をより汎用化した。また真空紫外光発生システムをタンデム型四重極質量分析システムに導入し、クラスター正イオンの振動分光におけるサイズ選別精度を高めた。これらの分光手法はこれまで分光研究が困難であった発色団を持たない中性クラスターやプロトン性分子のクラスター正イオンのサイズ選別振動分光研究を可能とする。よって気相クラスターの分子間構造解析や分子間相互作用の分光研究分野に、大きく貢献する。 上記の分光システムを用い、中性のアセトン単体および二量体、アンモニアクラスター正イオンやメタノールクラスター正イオンのサイズ選別赤外スペクトルの観測に成功した。観測した赤外スペクトルと量子化学計算に基づく基準振動計算の比較により、それらのクラスターの構造を決定した。その結果、アンモニアクラスター正イオンとメタノールクラスター正イオンが、プロトン移動型の構造を形成していることが明らかになった。この結果は、プロトン性分子のクラスター正イオンの構造を実験的に示したはじめての例である。さらにプロトン移動ポテンシャルについて量子化学計算を行い、プロトン性分子のクラスターのイオン化後、有効な障壁なく分子間でプロトン移動が起こるという異性化反応機構を明らかにした。
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Research Products
(14 results)