2009 Fiscal Year Annual Research Report
大気化学反応における水溶液界面構造とその役割の解明
Project/Area Number |
20750003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石山 達也 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 助教 (10421364)
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Keywords | 気液界面 / 不均質大気化学 / 分子動力学シミュレーション / 和周波発生スペクトル / 硫酸水溶液 / 電気二重層 |
Research Abstract |
地球大気の成層圏に多く存在する硫酸水溶液エアロゾル界面は,大気反応プロセスにおいて重要な役割を演じている.本研究は,その界面構造(特にイオン分布)を分子シミュレーションにより明らかにすることを目的として成された.昨年度は低濃度の計算を行ったが,本年度は大気化学で重要となる比較的高濃度硫酸の表面構造の特定を行った.手法としは既に実験で報告されている硫酸水溶液界面での界面和周波発生スペクトルを再現するような界面構造を分子シミュレーションにより特定するという方法をとった.本研究の目的を達成するためには,言うまでもなく分子シミュレーションで用いられる溶媒分子(水)のモデルが必要となるが,これまで使われていた水モデルは和周波スペクトルを部分的に再現できないことが明らかとなった.そのため,本研究では過去のモデルの欠点を克服する水モデルの開発を行った.本研究で開発された水モデルは,実験で報告されたスペクトルの特徴をよく再現し,さらには実験では困難だった水の和周波スペクトルの新しい帰属を行った.その結果によると,水表面では特徴的な水素結合ネットワークが形成されており,それが和周波スペクトルに現れることを明らかにした.この新しい水モデルを用いて高濃度硫酸水溶液界面の計算を行った.これまでに明らかになっていることは,モル分率で0.3程度の硫酸であっても硫酸イオンは第一段階がほぼ完全解離していることが明らかとなった.このことは,過去に一部で提唱されてきた非完全解離型の表面構造とは異なる結果であり,大気反応モデルの構築に有益な情報を与えるものと思われる.
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