Research Abstract |
ラマン分光法は, 生きた細胞内の分子分布やその構造変化を, 非染色・非破壊・非侵襲で観測することのできる, 非常に強力な方法である. 分子の構造変化は, ラマンスペクトルの微細な変化として現れるが, これらは分子からの直接の情報に他ならない. そこで本研究では, ラマンスペクトルの変化を高感度・高速かつ高空間分解龍で検知できる, まったく新しい分子イメージングシステムを構築し, 生細胞内における細胞機能発現のダイナミクスを分子レベルで可視化することを目標としている. 本年度は, 線虫を試料として用い, コヒーレント・アンチストークス・ラマン散乱. (coherent anti-Stokes Ramanscattering : CARS)に基づく分子イメージングを行った. その結果, 線虫内部の各器官を, 染色せずに良好なコントラストで可視化することに成功した. 特に, 線虫内部に存在する多数の脂肪滴や, 生殖腺, 卵などについて, 分子の情報に基づいて可視化することができた. 次に, CARS分光イメージングを用いて脂肪細胞の可視化を試みた. 脂肪細胞は、余剰なエネルギーを中性脂肪として巨大な脂肪滴に蓄積している. この脂肪は必要に応じて分解されるが、その過程には不明な点が多い. そこで, 脂肪分解を誘導する薬剤を用いることで, 分解過程の実時間での追跡を試みた. 試料にはマウス生細胞を用い, 脂肪分解刺激のためアドレナリン作動薬を用いた. その結果, 薬剤導入により微小な脂肪滴が多数産出することがわかった.
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