2010 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡な分子状態下で起こる超高速励起エネルギー輸送現象の解明とその非線形分光学
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20750010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金 賢得 京都大学, 理学研究科, 助教 (30378533)
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Keywords | ナノマテリアル / 光励起ダイナミクス / 超高速非平衡現象 / 量子ダイナミクス / 量子ドット / 時間依存第一原理シミュレーション / 分子動力学シミュレーション / 核量子効果 |
Research Abstract |
1.現実的に興味ある溶液系への応用を可能にし、かつ従来の半量子的数値実験の主な結果を再現できる新しいSemiquantum Water Molecular Dynamics法(以下SQW MD法)を用いて、これまで無視されてきた水素核の量子効果が水凝集体内の水素結合ネットワーク構造の組み換えダイナミクスにどのような影響を与ええるのか、考察した。その結果、ある水分子の周りの水素結合数の時間相関関数とそのパワースペクトルから、水素の量子効果により水素結合の記憶が急速に消失することがわかった。そのパワースペクトルは完全な1/fの形をしており、古典の場合におけるシングルタイムスケールダイナミクスを示すパワースペクトルと定性的に異なる。この結果は水素核の量子効果によって水素結合ダイナミクスがより複雑化しマルチタイムスケール化したことを示している。また、水素量子波束の非局在化は水分子内のOH長さやその周りの水素結合数と強い相関を持っていることを見出した。具体的には、量子波束が非局在化すると、OH長は短くなり、水構造が崩れやすくなって水素結合数が減少する。(逆もまた真)さらに、水素結合ネットワークの大きな組み換え変動には必ず水素量子波束の非局在化が伴っていることが分かった。水凝集体の中で水素量子波束のダイナミクスと水素結合組み換えダイナミクスが有意な相関を持っているという事実を示したのは本研究が初めてである。 2.量子ドットなど将来を嘱望されているナノマテリアルにおいて、その次世代太陽エネルギー素子として命運を握るとされているAuger/Inverse Auger過程を直接実時間で追うことのできる新しい第一原理分子動力学法を開発した。その結果、Double Exciton形成ダイナミクスが時間に対して単純な指数関数だけではなく、ガウス関数にも従うこと、その時定数が初期励起エネルギーが高くなるほど速くなることを見出した。また、Double Exciton再結合過程が、必ずその最低エネルギー状態付近から生じることを発見した。さらに、Auger/Inverse Auger過程に決定的な影響を及ぼすフォノンモードを見出し、その制御によってAuger/Inverse Auger過程を操作できる可能性があることを示した。
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