2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20750013
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大久保 貴広 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (30385554)
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Keywords | ナノ溶液 / 活性炭素繊維 / XAFS / XANES / 亜鉛イオン / 溶媒和構造 / ナノ空間 / 吸着 |
Research Abstract |
本年度は、活性炭素繊維(ACF)の細孔内における酢酸亜鉛(Ac_2Zn)水溶液の水和構造を中心に検討した。亜鉛は生体中で必須とされる微量元素の一つであり、体内における元素の存在量は、鉄に次いで2番目に多く、我々にとって重要な微量元素であるが、物理化学的観点からの理解は未だ不十分と言える。 まず、細孔内の亜鉛イオン近傍の水和構造と活性炭の平均細孔径(w)との関連を調べた。P7(w=0.7nm)とP20(w=1.1nm)の2種類のACFを用いて検討した結果、両者のEXAFSスペクトルはほぼ一致したため、ここでは、P7の細孔内で形成される水溶液について議論する。細孔内で形成される水溶液中の亜鉛イオンの第一水和殻の構造パラメータをみると、第一水和殻までの距離がバルクの場合よりも短くなっていた。この傾向はアルカリ金属イオンの場合にも認められたが、亜鉛イオンの場合、細孔内における水和数の減少が殆どない点が大きく異なる。 一方、383Kで真空加熱脱気した後のP7の細孔内におけるAc2Zn、及びその試料に水を飽和蒸気圧まで吸着させた状態での亜鉛K吸収端のXANESスペクトルを比較すると、水の吸着後にホワイトラインの強度が相対的に強くなったが、バルクの水溶液よりは弱いことから、対称性の高い水和構造を形成することができず、歪んだ構造を形成している可能性が高いことが示唆された。そこで、仮想的な歪んだ6配位の水和モデルに対するXANESの理論計算を行いホワイトラインの強度を比較したところ、4配位構造のものよりも強いが、正八面体の6配位構造のものよりも弱くなり、実験結果と良い一致を示した。以上のことから、細孔内における亜鉛の水和構造が歪められていると結論づけた。
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Research Products
(3 results)