2008 Fiscal Year Annual Research Report
炭素負イオンクラスターの冷却過程の追跡と振電状態の解明
Project/Area Number |
20750015
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
松本 淳 Tokyo Metropolitan University, 大学院・理工学研究科, 助教 (10443029)
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Keywords | 炭素クラスター / 励起分子素過程 / イオン蓄積リング / 負イオン |
Research Abstract |
本研究では, ビームラインを液体窒素で冷却可能な静電型イオン蓄積リングにより炭素クラスター負イオンを周回させる。黒体輻射による'光'電子脱離と残留ガスとの衝突により中性化した炭素クラスターを検出することで炭素クラスター負イオンの寿命の温度依存性を測定し, クラスターの冷却過程を追跡することを目的とする。 本年度は, まず静電型蓄積イオンリングの熱シールドの増設を行った。これによりリング全周のうち熱シールドに覆われている割合が68%から77%になった。次に, リングに周回させる負イオンの入射タイミングを調整し, 炭素クラスター負イオン(C_n^-)と炭化水素負イオン(C_nH_m^-)とを分離させることができた。2量体から6量体までの炭素クラスター負イオンについて常温で準安定状態の寿命を測定した。その結果, 先行研究を行ったグループと同様に, 炭素クラスター負イオンのうち2・3・5量体でミリ秒オーダーの準安定状態が存在し4・6量体では存在しないことがわかった。また, これらに水素が1個付加した炭化水素負イオンでは, 2〜6量体のすべてにわたり準安定状態が存在した。同時に水素が2個3個付加した炭化水素負イオンも観測することができた。次に, ミリ秒オーダーの寿命を持つ2・3・5量体の炭素クラスター負イオンについて, イオン蓄積リング内の配管に液体窒素を導入しビームラインを冷却し寿命を測定した。室温での測定と比較した結果, 冷却を行うと寿命が若干延びることがわかった。これらの寿命曲線は少なくとも3つの指数関数でフィッティングすることができ, 複数の準安定状態の寄与が示唆される。
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