2008 Fiscal Year Annual Research Report
新規シリルピンサー型遷移金属錯体を触媒とする還元的アルキル化反応の開発
Project/Area Number |
20750028
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鷹谷 絢 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 助教 (60401535)
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Keywords | 合成化学 |
Research Abstract |
アルケン類を原料とする還元的アルキル化反応の開発を目指し、錯体触媒の新規設計に基づく反応開発を行った。すでに申請者は、ビス(ο-ジフェニルホスフィノフェニル)メチルシランに対し等モル量のPd(PPh_3)_4を室温で作用させると、上記ホスフィンとトリフェニルホスフィン1つが配位したシラン配位錯体を空気中で安定な淡黄色固体として得られることを見いだしている。この構造は、各種NMRならびにX線構造解析によって決定した。そこでこれがシリルピンサー型ヒドリドパラジウム錯体の等価体として機能することを期待し、触媒としての利用を検討した結果、1気圧の二酸化炭素雰囲気下、種々のアレンに対し触媒量の本錯体をAIEt_3又はZnEt_2存在下作用させると、酸処理後β, γ-不飽和カルボン酸が高収率で得られることを見いだした。本反応ではまず、系中で平衡的に生じるシリルピンサー型ヒドリド錯体とアレンとのヒドロメタル化によりο-アリルパラジウム錯体が生成し、これが二酸化炭素へ求核付加することでパラジウムカルボキシラート錯体となる。続いて、AIEt_3又はZnEt_2とのトランスメタル化ならびにβ-水素脱離を起こすことで、触媒活性極であるヒドリド錯体が再生するとともに、β, γ-不飽和カルボン酸塩を与えたものと考えられる。二酸化炭素への求核付加は多置換炭素上で進行し、1, 1-二置換アレンとの反応によりα位に4級炭素を持つβ, γ-不飽和カルボン酸を高選択的に与える。本反応は、室温下わずか1 mol%の触媒でも進行する高効率的二酸化炭素固定化反応である。
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